学部の歩み

秋田鉱山専門学校
初代校長
小花冬吉(工学博士)

秋田鉱山専門学校創立当時の校舎(1912)

「秋田鉱山専門学校」に始まる大いなる歴史

明治43年(1910)3月、地下資源の開発とその利用に関する学問的根拠と技術者養成を目的として国立の秋田鉱山専門学校(Akita Mining College)が創設されました。

秋田は豊富な地下鉱物資源に恵まれていたことから、鉱業に関連した総合的な技術者養成の必要性を痛感した秋田県および藤田、岩崎、古河などの鉱山会社は、その養成教育を実施する専門学校設立のための校地と創設費の寄付を文部大臣に願い出た結果、明治41年(1908)にその願い出が許可されたものです。 このときから秋田大学工学資源学部の歴史が刻み始められたのです。

明治44年(1911)4月に、採鉱学科および冶金学科の2学科をもって開校し、世界最古の工学系大学であるドイツのフライベルグ鉱山大学(現 Bergakademie Freiberg, Freiberg University of Mining and Technology )の教育カリキュラムを採用して授業が開始されました。それ以後、鉱山機械学科、燃料学科、金属工業科、電気科、採油科、探鉱科の6学科が加えられ8学科に発展しています。その他に、附属鉱手養成部、工業技術員養成科、附属地下資源開発研究所も置く、我が国最大の鉱業に関する総合的な専門学校として完成され、高い評価を与えられたのです。

ダイヤモンド結晶とマイニングマーク
(交叉ハンマー)を表すシンボルマーク
(1911年に帽章として制定)

校舎玄関前(1942年)

秋田大学の時代 ~総合的工学系学部への発展~

第2次大戦後の昭和24年(1949)5月に、現在の秋田大学に包括され、鉱山学部として鉱山学科、冶金燃料学科、鉱山電機学科の3学科をもって再スタートしています。そのユニークさと歴史的な経緯から、“Mining College"の英語名が使われています。その後、産業や科学技術の発展とそれに伴う社会的な要請に応えるため新たな学科の拡充・増設が順次行われ、昭和40年(1965)には大学院鉱山学研究科(修士課程)が設置されています。平成2年(1989)の時点で、11学科(採鉱学科、鉱山地質学科、冶金学科、金属材料学科、燃料化学科、資源化学工学科、機械工学科、生産機械工学科、電気工学科、電子工学科、土木工学科)、1附属研究施設および附属鉱業博物館からなる国内でも有数な総合的な工学系学部に発展したのです。

平成2年から3年(1990~1991)にわたって11学科の改組・再編を実施し、資源・素材工学科、物質工学科、機械工学科、電気電子工学科、土木環境工学科、情報工学科(新設)の6学科となっています。平成6年(1994)4月には鉱山学研究科に博士課程(前期・後期区分制)が設置されました。さらに、平成10年(1998)には、鉱山学部の改組・再編によって、工学資源学部が設置されるとともに地球資源学科、環境物質工学科、材料工学科、情報工学科、機械工学科、電気電子工学科、土木環境工学科の7学科に再編され、現在に至っています。平成14年(2002)には、鉱山学研究科の改組によって、工学資源学研究科が設置され、名実ともに工学と資源学の拠点が形成されました。

授業科目として「環境と安全」を開講するなどエコ教育や環境改善活動に力を入れており、工学資源学部環境マネジメントシステムは、平成19年3月22日に、環境マネジメントに関する国際規格ISO14001の認証を取得しました。平成19年4月には「学び直し」の機会を創出し、再チャレンジを目指す若者、女性、高齢者等の有職者、退職者等の幅広い社会人を支援するため、大学院工学資源学研究科博士前期課程に「再チャレンジ支援プログラム」として、「環境リスクコミュニケーター養成コース」と「テクノマイスター養成コース」を開設しました。

また、昭和23年に開設された国立大学法人唯一の社会通信教育講座を有しており、科学技術に関する教養的な知識を得るための一般科学技術コースと、資源系、材料系、電気電子系の基礎及び専門を学べるコースが用意されており、その優れた教材内容は「文部科学省認定社会通信教育講座」に認定され、生涯学習、リフレッシュ教育として社会人の教育にも大きく貢献しています。



鉱山学部1号館前中庭の風景(1995)
[中央上のブロンズ胸像は秋田鉱山専門学校・初代校長・小花冬吉先生]


"Mining"とは?

中世以降、1つの大規模な鉱山や製錬所を形成し、運営するために、多くの科学と技術さらにはそこに暮らす人々と鉱石運搬のための社会基盤(インフラストラクチャと呼ばれる、電気・ガス・水道・道路・鉄道・港湾など)が必要とされました。 例えば、蒸気機関などの新たな技術は、鉱山で初めて排水用として実用化され、通気・運搬用としても応用された歴史をもちます。 すなわち、“鉱山”は、科学技術を統合化する“システムエンジニヤリング”を駆使して建設された、現代でいえば一種の“巨大プラント”と位置づけられる存在でした。 マイニングは、日本語では“鉱業”とか“採鉱学”などと訳されていますが、本質的には“統合化した科学技術”の原点であることを色濃く残した言葉です。製鉄、化学、発電所などの巨大プラントが主流となった現代においても " School of Mine " あるいは "Mining College " などと呼ばれる世界の大学あるいは大学院は、総合的な技術者養成を実施してきた伝統ある工学系の教育機関なのです。(例えば、 Colorado School of Mines など)